kikiの日記

心動いたもの

『かなわない』植本一子 読書メモ

『かなわない』

写真家で文筆家で二児の母、植本一子さんの日記・エッセイ集。

今日どこへ行った、何を買って、食べた、そのときこう思った。まさに日記、という感じの文章だけど、どこか温かくて心休まる。ずっと読んでいられる。

日記は2011年からスタートする。震災についての記録が多い。植本さんはお子さんが2人いる、毎朝保育園の送り迎え、ご飯の準備、寝かしつけ、大変そうだなぁ。と読み進めていて、そういえばこの日記どこまで続くんだろう?とKindleの進捗バーを見たらまだ20%くらいだった。待って……4000ページあるよ!?となりましたが、移動時間や日々の持て余した時間にコツコツ読み進めました。この日記は植本さん自身のブログにリアルタイムで公開されていたものらしい。『自分のダメなところをさらけ出している文章。なかなかここまでありのままを、包み隠さず書ける人はいない』というように紹介される事が多いはずだし、私もそのような紹介文に触れたのがこの本を知ったきっかけだった。

日記が2012年に差し掛かったあたりで?その『さらけ出し』度合いが強くなっていく。植本さんが育児に悩むことが多くなると同時に、写真家の仕事もステップアップしていく時期で、前進するワクワク感があるのに、理想どおりできず劣等感で塞ぎ込む、あるいは周りの人に当たり散らかすというようなことが結構あって、私の人生とは全然違うのに、ずっと「わかる」し、憧れるし、こういう日々を過ごした先に、どんな結末が待っているんだろうと気になって読まされてしまう。

最後(2014年)まで読み切ったけど、まさか、まさか、こんな展開が待っているとは。いや、3年、4年?もあれば、何もかも変わってしまうよな。特に植本さんのように、自分を見つめることができて行動力のある方なら。おこがましいけど私と似ているなと感じる部分も多く。終盤、植本さんが心理カウンセリングを受ける日々の記録がある。カウンセリングはチャット上で行われてるから、おそらく先生の言葉がそのまま正確に引用されてると思うんだけど、それがもう、私にもガンガンに響いてしまって…読了後、まるで私がカウンセリングを受けた後みたいにスッキリした気持ちになるなんて、読む前は想像もしてなかった。(実際に受けたことはない)

「自己肯定感」とか「依存」とか、現代のメンタルヘルスについて格言めいたものをSNSでよく目にする。少なくとも私が触れているSNSアルゴリズムでは。大抵「自己肯定感」は高いほうがいいし、「依存」はしないほうがよく、依存先を一つじゃなくて複数持っておくことが自立という事なんだよ云々。点で散らばっているそれらの格言たちと、本の中の先生が言ってることは大きく変わらないのだけど、SNSの不特定多数に向けたバズるための言葉じゃなくて、目の前の『あなた』のために紡いだ言葉だから、こんなにも説得力や重みが違うんだなと思う。

今このタイミングで出会えて良かったな〜と思う本でした。

カウンセラーの先生の言葉にはマーカー引きまくりだったのですが、ひとつだけ引用。

──人と同じを目指すんじゃなくて、人と違うを目指してください。そこにあなたの価値が生まれるんです。あなたは本当のことを話せば人から好かれないと本気で信じていますね。逆です。マニアックなあなたをアピールしなければ大事な人に素通りされちゃうよ。

今2024年なので、この日記の結末から10年経っている。植本さんの生活や考えていることなんかはまた大きく変わっているんだろうと思う。他の著書もぜひ読んでみたいと思います。

日記を書く習慣はないけど、自分が何考えて生きてたかってきっと忘れてしまうから残しておくの良いよねと思って、何となくiPhoneのメモを見返していたら、2018年に書いた400文字くらいの謎の短編小説的なものを発掘。

自分が書いたものとは思えない、何かの本から引用してメモに残してた?と思ったけど、引っかかるところがあって、じっくり記憶を辿ったら、思い出した。完全に実話だし、私が考えたことだし、私の文章だった。こんな事、あったわ〜!思い出せた。残しておいてくれてありがとうな。

しかしそれを公開する勇気は…出なかった!(ちなみに、好きな人から深夜にLINEが来たというだけの内容)